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2010年03月18日

第1回-営業活動はお早めに

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数年前のある夕方、コンサルタント先の社長から電話が掛かって来た。業種はオプトエレクトロニクス関係の装置ベンチャーである。いつもはほとんどがメールでのやりとりなので、何だろうと思っていると…。

「実は会社の資金がショートしそうで、とても危ない状況。来月末でキャッシュがマイナスになる」

コンサルタント先がそんな状況になるまで、それを電話で知らされるまで気がつかないコンサルタントというのは如何なものかと思われるかもしれないが、私の会社は「キャッシュフローから材料開発まで」、つまり一般的な経営コンサルと技術コンサルの両方を行っており、このコンサルタント先の場合は、開発製品の技術コンサルのみを行っていた。しかも「地元地方銀行出身のベテラン会計コンサルタント」とかいう御仁がついていたので、コンサルタント同士の領域を侵さぬよう、会計面には完全にノータッチだったのだ。

「ベテラン会計コンサル氏は一体何をやっていたんだ?!」と愕然とし、せっかく丁寧に、慎重進めてきた開発製品が水泡に帰しては大変と、急遽領空を侵犯して詳細を聴いたところ、要するに「仕事がない」と言う。しかし社員数名の給料支払いもあれば、事務所家賃、諸経費、さらに(少なくない額の)助成金や借入金の返済もある。電話をしながら手元のメモで計算しても、むこう数カ月でちょっとした額の「リアル赤字」が出そうな雰囲気である。そして社長曰く。

「来月でショートして、再来月が更にマズいのですが、何か良い仕事はありませんか?」

これはどう考えても無理な話だ。飲食店ではないのだから、最短でも「月末締め翌月末払い」の30日サイトを経なければ現金は入って来ない。つまり電話で話している時点(=当月)で、来月の売上をどうこうすることなど絶対に不可能なのだ。「今月末に請求書が出せなければ、来月のキャッシュの話など出来ないでしょう!」と思わず私が強く言うと、社長は「はぁ、そうなんですが…」と力なく答える。「物理的に不可能」というレベルである。「タイムマシンはありませんか?」という質問と同じだ。
仕事のリードタイム(工程時間)を考えると、仕事の着手はさらに遡ること数カ月、その契約成立はさらにその前、そのための営業活動や提案、仕様検討などはさらにらさに遡って…。

コンサルタント先はエンジニアが集まって立ち上げたベンチャーで、事務屋はゼロ。このように文章で書くと、「まさか?!」という感じだが、社長以下数名が死に物狂いで受注案件を完成、納品して、どうにか入金。しかしそのキャッシュを給与や借入金返済に充てると、意外に残りは少なく、そして作業中は営業が出来なかったため、「次の案件」もなく…という宜しくないサイクルは、技術系ベンチャーやデザイン、IT系ベンチャーでは陥りやすい罠かもしれない(彼らの口ぶりや、会計専門のコンサルがついているということから、たとえ受注が途切れても、その間の回転資金はそれなりにあると思っていたのだが…)。
大企業ならば当たり前の四半期計画や中期計画(三ヶ年計画)のローリングなども、日々の仕事を毎月の決算に追われるベンチャー企業ではおざなりに、あるいは亡きモノになってしまうのだろう。

結論として、日銭で回る流通業やサービス業以外は、装置メーカーだろうが、材料メーカーだろうが、あるいはデザイン、IT系企業でも、「営業活動から現金を手にするまでは数カ月。場合によっては半年から1年かかる覚悟が必要」なのだ。さらに現金ではなく、手形など出された日には、「現金を見るまで、果たして会社はあるのだろうか?」という感じになって来る。
例えば私の会社は9月末決算だが、3月のこの時期にもなると、そろそろ今年度9月期の総売上が見えて来る。ご多分に漏れず(?)前年比**%減になりそうだ。やれやれ。別のコンサルタント先でやはり9月末決算の会社があるが、つい先日の営業会議で今年度売上の話が出て、「当年の売上に反映される新規開拓は、ウチの業態ならば第1四半期(前年の10月から12月)が限界なのではないか」という結論になった。

業種による違いはあるが、新規開発やカスタマイズ、新規顧客開発を含むビジネスでは「二年越し計画」を意識すべきだろう。営業から現金回収まで、期を跨ぐことはひとつも珍しくなく、そうした中長期的な展望と計画の実施が、目の前の諸案件を追う担当社員とは異なる、「経営者のビジョン」となるのだ。
よく宇宙の話で「みなさんに届いている星の光は、今から**年前に発せられたもので」と言われるが、営業活動にもそれくらいのタイムラグがある。いま行っている営業活動がキャッシュになるのはいつ。そして、何年の何月頃に売上を上げたいならば、営業活動は遡っていつごろに行って…と、時空を超えてダイナミックに考えることが必要だ(SFか?!)。

さて、冒頭のコンサルタント先ベンチャー対策。急遽、営業から成約、作業リードタイムと請求、支払サイクルなど、営業活動とキャッシュフローに関する基本説明の資料を作り(それまでの契約では対象外になっていた内容なのだが)、数日後に訪問。小規模な委託開発案件などを私のコネクションから探し出しつつ、緊急の追加借入を検討する等々、延命策を模索することになったのだが、ここでさらに「ポテンシャル・カスタマー(潜在顧客候補)数」の件で愕然とする。それは次回。

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