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第54回-にくい貴方



私レベルの英語力では和訳、英訳の仕事はとても務まらないが、職業翻訳者が訳した専門文書の査読はちょくちょく行っている。専門分野としては光工学、電線、ジャズ、ロック、ブラジル音楽、映画等々。大量の英文を日本語にして行く翻訳者のパワーは凄いと思うが、「餅は餅屋」というかなんというか、専門知識の欠落から来るとんでもない誤訳も少なくはなく、そこを補うのが私のような人間の仕事になる。そもそもそんな「査読」に興味を持ったのはもう30年くらい前のことだ。

大学生の頃だったか、美容室で待ち時間に呼んだ月刊プレイボーイに小説家スティーヴン・キングが作家仲間と結成したロックバンド「ロック・ボトム・リメインダーズ」に関するコラムが載っていた。筆者はもちろんキング本人で内容はツアーに関する悲喜こもごも。なんとキングは執筆の合間にツアー・バスをチャーターして、本格的なライヴ・ツアーまで行っていたのだ。

これが彼の小説よりも面白いのではないかというくらいの名文で、物凄い勢いで、夢中になって読んだ…が、あるところでパタリと止まった。「そのブーツは歩くために出来ている」という曲名(?)が出てきたからだ。

このブログの読者の方ならば、フムフムと気がつくだろう。「このブーツは歩くために出来ている」の原題は"These Boots Are Made For Walkin'"、ナンシー・シナトラの名曲「にくい貴方」のことだ。

これを読んだ時に、「翻訳というのはなんと難しいものなんだ?!」と痛感、というか気づいた。確かに"These Boots Are Made For Walkin'"の直訳は「このブーツは歩くために出来ている」だが、それでは前後の文章の面白みも全く伝わらないし、そもそも誰のなんという曲だか、原題を知る人以外には伝わらない。天下のプレイボーイ日本語版でも、こんな不十分な和訳をするのかと意外にも感じた。

当時私は大学の帰りに千駄ヶ谷駅前にあった津田英語会(現・津田塾大学オープンスクール)に通っており、翻訳は無理でもなんらかの形で英語に関係した仕事をしたいと思っていた。結局それは電線会社勤務と音楽・映画ライターという本業を経て、その分野の「査読者」という不思議な仕事で実現したが、なんというのかな、一応英語がわかる人間の、専門分野に関する手直しとちょっと気の利いた言い回しで、英文和訳は見違えるように活きて来る。そんな風に考えている。

もっともこれは、翻訳云々に限らない、異文化コユニケーションの根幹に関わることだが…。
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